こんにちは。さっぽろ矯正歯科クリニック、院長の桜田です。
歯科矯正で歯が動くのはどうしてかご存知でしょうか?
今回は歯科矯正で歯が動く仕組みについてご説明します。
歯科矯正で歯が動く仕組みを知れば、矯正治療に時間がかかる理由も理解していただけると思います。
歯科矯正の仕組み。歯はどうして動くのか?
歯科矯正では、様々な装置を使って歯に継続的に力をかけて歯を移動させます。
一般的なワイヤー矯正では、歯にブラケットという装置を付け、そこに弓型のワイヤーを通します。
ワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して歯に力をかけ、歯を移動させるのです。
この時、口の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
歯が動く仕組み
歯が移動するのは、歯の周りの組織の代謝によるものです。
歯茎の中には歯を支えるための骨「歯槽骨(しそうこつ)」があり、歯槽骨と歯の根っこの間には「歯根膜(しこんまく)」という弾力性のある膜状の組織があります。
今回は歯を右側に動かす場合に、歯の周辺組織でどのようなことが起こっているのか見て見ましょう。
①歯根膜が伸縮する
歯を右に動かしたい場合、矯正装置を使って右に向けて歯に力をかけます。
そうすると歯は歯根膜ごと右側に引っ張られます。
歯根膜ごと右に引っ張られることによって、歯の右側の歯根膜は縮まり、左側の歯根膜は引っ張られて伸びてしまいます。
②右側の歯槽骨が溶かされてスペースができる
歯の右側の歯根膜が縮まると、歯の右側では歯槽骨を溶かす細胞が作られるため、歯槽骨が溶かされます。
歯槽骨が溶かされた部分にはスペースができ、できたスペースの分だけ歯が移動します。
③左側の歯槽骨を成長させて歯根膜の厚みを維持する
歯が移動すると、今度は移動した分だけ歯の左側にスペースができます。
そうすると、歯の左側では歯槽骨を成長させる細胞がつくられ、歯槽骨を成長させて歯根膜の厚さを一定の厚さに維持しようとします。
歯根膜には一定の厚さを保とうとする性質があるためです。
この歯槽骨の代謝が繰り返されることによって、少しずつ歯を移動させるのが矯正の仕組みです。
ワイヤー矯正以外でも歯が動く仕組みは同じです
歯並びの状態や患者の年齢などによってはワイヤー矯正(ブラケット矯正)以外の治療方法を選択する場合もありますが、歯が移動する仕組みは基本的にどれも同じです。
マウスピース矯正の場合
透明のマウスピースを装着することで歯に力をかけ、歯を移動させます。
歯が移動する原理はワイヤー矯正と同じですが、マウスピース矯正では弱い力を継続的にかけて歯を移動させるので、歯を大きく動かすような治療にはあまり向いていない場合もあります。
マウスピース矯正についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
インプラント矯正の場合
インプラント矯正では顎の骨に金属製の細いネジ「アンカースクリュー」を埋め込み、不動の固定源を作ることで、効率的に歯を動かす方法です。
通常の矯正治療では、移動させたい歯に力を加えるためには原理上どうしても他の歯にも力がかかってしまいます。
しかしインプラント矯正ではアンカーを基に力を加えるので、他の歯へ力がかかることがありません。すなわち、動かしたい歯だけを矯正できることになります。
インプラント矯正では今までの矯正治療では難しかった方向への歯の移動(奥歯を後ろへ移動させる、歯を骨の中に沈める)もできるようになり、矯正期間が短縮できるなどのメリットもあります。
※歯がなくなった時に歯の代わりとして人工歯を埋め込む「デンタルインプラント治療」とは異なるものなのでご注意ください。
歯科矯正で歯を移動させるには時間がかかります
矯正治療によって歯が動くスピードは治療や装置の種類にもよりますが、1ヵ月に約0.3~1.0mm程度です。
人間の骨は大人になっても新陳代謝が繰り返されており、約3年周期で古い骨と新しい骨が入れ替わります。
この骨の新陳代謝の性質は歯槽骨も同じで、歯科矯正はこうした性質を利用した治療法なのです。
強い力を加えればその分歯が早く動くというわけではありませんし、無理な力をかけると歯の周りの組織に負担がかかり、痛みや歯のぐらつきなどの原因になってしまいます。
歯を大きく移動させるような治療は相応の時間をかけなければ、安全・確実に行うことができないのです。
まとめ
・歯科矯正では、矯正装置を使って継続的に歯に力をかけることによって歯を移動させます。
・歯の移動は「歯槽骨」「歯根膜」といった歯の周辺組織の代謝を利用して行っています。
・矯正装置によって歯への力のかけ方が変わったとしてしても歯が動く原理はどれも同じです。
・歯科矯正で歯が移動するスピードは1ヵ月に0.3~1.0mm程度です。強い力をかければ早く歯が移動するというものでもなく、逆に歯の周りの組織へ悪影響が出てしまいます。
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